カスタマージャーニーはじめの一歩
なぜABMが古くて新しい考えといわれるか〜アカウントカバレッジ
リードをベースとしたマーケティングに対し、アカウントベースドマ−ケティング(以下ABM)ではアカウントごとつまり顧客である会社単位でそれぞれ何人の見込客を保有しているかどうかを把握します。例えば、A社は5人、B社は10人というようにアカウント別の数字を用います。
ある程度の規模の会社の場合確かに2、3人しか会える人がいない会社より10人、20人と購入に関係しそうなコミュニケーションが行える見込み客がいたほうが提案のインパクトと商談機会は大きくなります。
もちろんこの数字は多ければ多いほどいいのはあたりまえなのですが、合わせてその質も常に測定する必要があります。見込客が同じ部署の方ばかりだったり、肝心な意思決定者が見込客として捕捉できていなかったりすれば、どんなに見込客数が多くてもその価値は低くなります。
では質はどうやって測定したらいいのでしょうか。
そのひとつが「アカウントカバレッジ」という考え方です。アカウントカバレッジとは購入の意思決定にかかわる部署をどれくらいカバー(コンタクト、コミュニケーション可能かなど)できているのかを評価する指標のことです。
通常縦軸に利用部門の組織(IT、生産、流通など)購買管理、マーケティングなどをとり、横軸はCxO、事業部長、マネジャーなど組織の階層レベル、社内の権限レベルの役職をとります。
ある見込み客(会社)は4部署で構成されているような場合、その4つの部署をどの程度カバーできているのか、あるいはキーパーソンがターゲット顧客の中にに5人いたとして、そのうち何人を見込客化できているかという指標になります。
アカウントカバレッジの具体的な進め方、方法としては、組織図のような形にしたり、上述のマトリックス上に捕捉できている見込客を配置したりして使うのが視覚的にどの部署のどのキーパーソンまでカバーできどこが抜けているかが一目瞭然になります。私が勤務してきた会社ではこのマトリックスのことをカバレッジマップとかピープルマップと呼んでいました。
私の体験からも比較的大きな案件、顧客の場合最も有効な営業ツールはこのカバレッジマップだったと思っています。そしてカバレッジマップはマーケティングやコンタクトのレベル管理だけではなくコンタクトポイントの行動パターンや性格(保守的、新しもの好きなど)の情報を入れていくことで、そしてどのようなコミュニケーションの施策(プレゼンテーション、イベント招待など)をあてて行くかなどの検討の土台として一層価値がアップします。
そしてさらに営業活動にこの「マップ」を活かすには営業部門でのミーティングやディスカッションにより顧客とのコミュニケーション可能性、影響を与えられるレベルがどう変化向上したかを常に把握することが重要になります。
最近のマーケティングオートメーションではこの見込み度(商談確度)が向上した見込客をMQL(Marketing Qualified lead)という言葉で呼んでいます。
アカウントカバレッジのモニタリングをしっかり取り入れれば従来のリード単位での営業会議では見えてこなかったさまざまな発見があります。
最近は(とくに2015年あたりから)アカウントカバレッジの重要性が言われ始めましたが、この考え方自体はIT商談の世界では何十年も前から取り入れられていた考え方で目新しいものではありません。ビッグデータ、MAツールの発達そして顧客体験設計などの考えでまたあらためてその有効性が注目されているといってもいいでしょう。
ABMが古くて新しい考えと言われるゆえんのひとつかと思います。
パイプライン管理という考え方
社会人になって最初に入った会社では聞かなかった言葉でしたが、その後の勤務した会社では完全に営業の案件管理とほぼ同義語として使われ、さらには案件(いわゆる見込み客、仕掛り商談やプロスペクト)そのものすら「パイプライン」と呼んでいました。
1990年代後半、私が営業マネジャーしていたころですが、新任のテレセールスさん、新人さんたちが入ってくると真っ先にこのパイプラインという考え方を説明するほど営業現場の共通言語になっていました。
そんな重要な考え方でも経営機能でもあるパイプライン管理についておさらいで、あらためてその意味はというと、
"パイプライン管理は製品・サービスの販売対象市場から見込み顧客の絞込み、セールスコンタクトにかかる時間、案件獲得に関する確率を考慮して、時間の流れで案件発生量の流れと売上の発生時期を予測・可視化していくものです。月間単位、あるいは四半期、年度という時間軸で売上を計画・管理していく手法のひとつです"
となります。
わかりますか?
つまりポイントは案件単位に目の前の売上や予算目標達成を追求する営業活動よりも、やや全体をを見て営業活度を把握する視点が加わることで
来四半期、来年度の売上計画や目標を考える際に、「今必要なもの」を把握する際欠かせない考えということになります。
またパイプライン管理により営業プロセスが可視化されている場合は、営業活動が停滞した際にも対応策がより立てやすくなります。
このパイプライン管理の中核をなす考え方が「ファンネル(いわゆる漏斗)」です。日常、営業パーソン、マネジャーは一日中自分のファンネルの中の進み具合を見つめているともいえます。パイプラインの考え方ををマスターすることは、目標達成、収益を高めるために非常に有効な方法と考えられています。
次はこのファンネルの考え方。またパイプライン管理のデメリット(あるんです!)などにも考えて行きます。
営業で最も重要なスキルの質問力:「選ばれる」側の視点からの質問
営業の成功=受注はこちら側・売り手の成功であり自社の営業活動や様々な提案がうまくいったからであると当然考えます。
私の営業マン時代は「いかによい提案できるか」「プレゼンテーション決めるぞ」にこだわってきました。しかし、実際は顧客にとってはどちらの会社の提案も決め手に欠く、各社提案のうちどれが最適か判断がつかないという状況がふつうです。ところが営業がうまくいった際は「やった」という感覚のほうが強くなかなかそこに考えが及びませんでした。
本当に大事なは受注の際「どうしてうちに決めていただいたのだろう」ということを明らかにすることなのですが、そのための質問は意外とできていないことが多いのが現実です
法人営業の世界では、顧客からすると「なぜこの会社に発注するか」という理由が明確にならないと成約にはいたりません。それは提案内容や製品の強みだけではないはずです。
つまり顧客に真の価値を提供するには、「なぜうちにに発注してくれる」という顧客側の理解は必須です。
受注の後、継続注文いただいたとき「どうしてうちに発注いただけたのですか」という質問は必ずするべき質問のひとつです。
もちろん失注の際も自社の提案のどこが弱かったのか、競合のどこが強かったのかの分析は法人営業の場合必須ですが場合によってはなかなか聞けないことも多いですが受注の際は顧客の気分もいいはずですから訊きやすいでしょう。
話ははかわりますが、アラサー以降の女性が婚活に成功する際の条件のひとつが自分が好きな人に夢中になったということより「男性が選ぶ理由、どうして私を選ぶのだろうか」という選ぶ側の論理ではなく
を持っているということだそうです。
そもそも法人営業とは~その2 営業パーソンにとってのメリット
ちょっと視点を変えて個人(営業パーソン)にとっての法人営業に携わるメリットについて。
今はB to Cの営業やっている方、 B to B ビジネスマンのベンチャーに転職を考えている方にも参考になれば思います。
もちろん向き不向きや好き嫌いもあるでしょうから B to B の方が絶対いいとかおすすめいうわけではありません。また今の時代はB to Bでも最終需要者である消費者を意識する必要ありますしB to Cでも法人営業の管理ノウハウが必要になる場合が多いので柔軟に考えることが大事です。
まず働く際の条件や環境がちがいます。 B to Bの仕事はよほどきびしい会社でなければ概ね次のような条件です。
基本的に普通は平日日中勤務
電話アポイントでどなられたり飛び込み訪問で塩まかれたりすることはまずない
一件あたりの商談の金額が大きい
研修やトレーニングが充実している
B to Cの世界で「くじける」要素はかなり少ないことが多いのは確かです。私も大昔にはなりますが新入社員の頃や、中堅営業マンになって新規開拓で苦労していた頃でも個人客相手の営業している友人の話を聞くと「あちらはあちらでたいへんなんだなあ」と思いました。どっちがいいというより苦労の内容のちがいでしょうか。
そして何よりも法人営業の大きいメリットはその業界のこと、会社の仕組み、ビジネスの流れ(サプライチェーン)についての学びの機会がたくさんあるということ。そして経営者、決裁者など経営に関わる方々からビジネスのやり方考え方をダイレクトに学べる機会も多いということです。
逆に、実は私のクライアントにもB to C、(正確にいうとB to B to Cですが)の会社様があります。社長さんとお話ししていて営業の本質って同じなんだなと思う部分と意外とB to Cの経験や視点って法人営業にも活かせるのではとも感じてます。
営業に関わるすべての方は自分のキャリア、ノウハウ見直す際には法人営業ってなんだろうとぜひ一度考えてみることおすすめいたします。
これからの社会はあらゆるシーンで最適化がますます進む〜こういう時代の営業の価値とは
これからの社会はあらゆるシーンで最適化がますます進むことはまちがいないといわれています。事実最近世界で成功したビジネスモデル、企業はまさに今まで対面や電話などのアナログ情報で行われていた仕事のプロセスを一気にデジタルの力で最適化したものと言ってもよいでしょう。
そうなると最適化されていない世界をアナログ手法で埋めていたことに価値があったビジネスはこれからますます市場縮小していきます。
ラクスルで印刷を頼みながらそんなこと考えていました。
そして今まで営業という仕事は顧客側の情報不足を供給側の商品知識、経験、そしてまだ気づいていないニーズの掘り起こしなどを提案などの活動で伝える仕事です。言い換えると顧客のビジネスを最適化するお手伝いをしているとも言えるでしょう。ただし、これはいわゆる情報の非対称性(顧客と売り手の知識、情報量の差)あるゆえ成り立っていました。
この最適化がどんどん進んだらB to B商材といえでもインターネットで瞬時にタダ同然で顧客側も情報を入手しておりある程度の比較検討がされているということです。
ある意味営業受難時代?!
確かに特殊な製品でない限り商品知識や商品情報をベースにした「ソリューション営業」の役立つ範囲は狭まっていきます。
しかしまだまだ営業の役割と価値は大きく続くと思います。溢れかえる情報を整理して顧客のビジネスの「最適化」にどう役立てるかをいっしょに考えて伝えていくといいう役割はしばらくはなくならないのではないでしょうか。
課題解決だけではなく課題発見にフォーカスするのが営業の価値になっていくということでしょう。
商談プロセス管理時代の終焉
私が外資系のIT企業で働いていた時代の営業研修でいわれていたことは、今考えるとまさに商談のプロセス管理をちゃんとしなさいという内容でした。
High Value System Sales(高付加価値=大型のシステム案件営業術みたいな研修)を泊まり込みで何度もしました。
その後のSFA全盛期になっても基本は営業プロセスの見える化だったり、営業パーソンが日々案件獲得、パイプライン進捗のために何をするかをひたすらおいかけるようなイメージでした。
つまりこちら側の行動(初期提案からデモやプレゼン、トップ担ぎ出しなど)の管理で商談を進めるという発想です。営業活動をこうやって最適化することこそ達成への正攻法であるといわれていました。
ある会社ではMake SALES a Science(営業を科学に!)なんていう掛け声もあったほどでです。
ただし、営業を科学(再現性と確率論?)にするにはデータ、つまり営業現場での活動が正確に、まめに入力されているのが条件になります。進捗度合いや商談角度のパーセンテージがテキトーだとすると科学には程遠いです。
ところがWEB時代も進むと営業パーソンの涙ぐましい?努力でマネジャーから叱咤されてせっせと商談進捗情報をSFAにいれても顧客側のぜんぜん異なるプロセスで意思決定され他社にとられてしまうなんてこともあります。
つまり、顧客側がWEBなど以前とはくらべものにならないほど「営業パーソン以外」からの情報で調べ尽くして自分たちで決めてしまうことが多くなっているということです。
実際、ここ数年で起きている変化は顧客側がWEBでどんどん調べて比較検討も行い事例も調べてさっさと購入を決めているということがB to Bの世界でも進んでいます。
そう、まさに我々が家電を買う場合に、価格比較サイトや口コミサイトなどで調べた上で駅前の量販店で最後のプロセスとして購入(アマゾンならそれもワンストップ)するようになったのと同じことがおきているといえます。
もちろんB to Bの世界でも電子商取引はどんどん拡大しています。
今でもSFAの威力やプロセス管理は依然として基本中の基本であるとは思います。
ただ、せっせと「自社」のプロセス管理に注力しデータを入力をしていても顧客の中で「リアルに動いているプロセス」がどうなっているかのチェックこそが重要です。そしてそのために有効な営業活動をナレッジを集めて探ることこそこれからの営業の価値になると思います。